202.会社が永続して発展し続ける条件とは?(その6)「試すこと、残すこと」
2019/11/21
前回はビジョナリー・カンパニーの5つ目の特徴「カルトのような文化」について触れました。
第6回目の今回は、「大量のものを試して、うまくいったものを残す」について短くまとめてみます。
ビジョナリー・カンパニー18社の、6つ目の特徴的な共通点は
「各社の特に成功した動きのうちのいくつかは、緻密な計画に基づくものではなく、
実験・試行錯誤・臨機応変によるものであったり偶然の結果だった」との事です。
後からみて素晴らしい戦略だと思えるものが、実は行き当たりばったりの試行錯誤の結果であったりする傾向が強かったとは意外です。
例えば、
・医者向けの事業が中心だったジョンソン&ジョンソンは、ベビーパウダーを足がかりに消費者向けマーケットに大きく進出したが、そのきっかけは、同社の薬用絆創膏を使用した患者の皮膚に炎症が起こるというクレーム対処にスキンパウダーを缶に入れて医者に送ったところ、患者から直接注文がくるようになった事から始まった。つまり全く偶然によるものだった
・同社のヒット商品のバンドエイドは、社員が自分の妻の切り傷の保護のために作った簡単な絆創膏の発明を聞いたマーケティング部門が製品化し世に出すも最初は売れず、果てしない手直しを重ねて最大の人気商品になった
・ルートビア屋から始まったマリオットは次にレストランを展開し、その8店舗目が他の店舗と違い、空港にあったが故に食べ物を機内に持ち込む客が多かったのをマリオットが見て、翌日から飛行機の機内食事業を立ち上げ展開、成功させる
・アメックスは元々地域小荷物輸送会社として始まったが、現金輸送サービスが郵便為替の普及で縮小、その時に自社の送金為替を作り、金融サービスに変身していった
・ヒューレットパッカードはコンピューター事業進出の際、戦略計画はなかったetc…
(シティコープ、GE、ソニー、他にも代表的事例として3Mの事例が大きく取り上げられていましたが、本稿では割愛します)
もっとも、誤解のないように言うなら計画が全くなかった訳ではなく、
「計画以外の何らかのプロセスによって成功がもたらされている」点が共通しているとの事です。
言い換えると、
「いくつもの新しいものを試し、うまくいったものを残し、うまくいかなかったものは改善するか捨て去る」
この事は生物の進化と似ていて、
特に計画されたものではなく、それまでの延長線の小さな変化が、意図しない大きな戦略的転換に繋がっているとも言えます。
ビジネススクールの企業戦略講座では、これらの戦略的な競争がどこから生まれてくるのかを言及しない点を指摘されていましたが、だから我々は意外に思うのかもしらません。
ではこの重要な共通点は一体どこから生まれてくるか?
それは、
・権限の分散を進めて新しい創意工夫を促し社員が新しい実験をできるようにして変異を促進する(3Mの15%ルール…技術者に勤務時間の15%までを自分で選んだテーマや創意工夫に充てるよう奨励等)
・同時にアイデアへの厳しい選択基準を設け、収益性を実証し、特に会社の基本理念に合っているものだけを残す
・失敗がある事を理解し許容する
(もちろん失敗が許される範囲はあります)
といった点が挙げられていました。
基本理念からそれずに、権限委譲しそして多くのアイデアを試す、そして失敗がある事を理解し許容し、選択していく。
実験が失敗に終わってもそれは単なる実験であって、企業全体を揺るがす失敗でなければ許すのも容易との事。
今の日本の企業はどちらかと言うと真逆の組織が多いように感じます。
小さな失敗を許せないから部下に権限委譲できない。
いちいち細かい事まで指示・命令する。
これでは部下が育つどころか指示待ち族になり、結果的に会社がなかなか成長しません。
日々、どの部分を部下に任せてみるかを考え、ゴールを共有し、自由に発言できる心理的安全性の高い職場を作り、コーチングでアイデアを引き出しながらフィードバックやアドバイスを織り交ぜ、進捗を確認し成果へのプロセスを見極めると同時に部下を育成する必要があります。
会社の永続発展のための変革の第一歩は、上司から、さらにはその上の経営幹部から変わる事ではないでしょうか。
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