幹部チームが変われば業績も変わる
~トップダウン体質からの脱却、責任を取り始めたリーダーたち~
キクヤ株式会社 代表取締役社長 遠山雅治様
社内の雰囲気が悪く従業員が短期間で辞めていく職場
チーム開発プログラム(以下TDPと略す)導入前はどのような問題を抱えていましたか?また何を手に入れたかったですか?
TDPを導入する前年に相談させてもらった時が私自身一番メンタルが弱っている時でした。たしか、自分でExcelを作って、TDP参加候補メンバーの8人の名前、現状、どうなって欲しいのか課題みたいなものをいまだに残していますが、それを持って行ったのを覚えています。
当時は、とにかくしんどかったですね。社内の雰囲気は悪く、5年と続かず人が辞めていっていました。それに管理職のメンバーを信用できていませんでした。管理職なのに自分のことを優先していて、給料を上げてほしい、休みを増やしてほしいというのをちらほら耳にしていたし、その人たちが一斉に辞めると言われた時にはたちまち回らなくなる。かといってそれを聞き入れてすごい緩い体質の会社になるのもよくないし…いよいよ過渡期にきたというか、何か変えないとよくないなという状況で、社長になって3~4年目の、父から完全に権限委譲された年でした。
「現状をこう言う風にしてほしい」という従業員の要望も私の耳に入ってくるようになりました。管理職は自分のことしか考えていない、でも売り上げは上げないといけないという狭間で、私からしたらもっとやれるはずなのに権利ばかり主張しているなと思う中ですごいストレスが多くかかっていました。このような状況下でクリエイティブな脳にはならないし、ずっと続かないと思っていました。
当時は誰か一人を引っ張り上げて常務や専務にしてしまう方が、その人と二人三脚でやっていけばいいんじゃないかと発想もしていました。でもまだ社歴が5~6年で、しかもなぜその人を引っ張り上げたいか理由も必要だったし、やっぱりそれは難しい選択でした。結果としてTDPを導入したおかげで全員のレベルが上がったと体感しています。
なぜTDPを導入しようと決断されましたか?
経営者向けのスクールに父が学びに行き、その後私も部下も行きましたがまずまずの金額がかかり、しかしお金と時間をかけた効果に対して見返りが少なく感じました。私自身は行って良かったと思ったけれど、受講された他の社長さんと話したときに「見返りは3割で残りの7割は上手くいかない」という話があって…それでも部下をスクールに行かせていましたけどね。じゃあそれを全員に行かせると8~9倍かかるわけであって、一方TDPは今回4カ月という短いバージョン(カスタマイズ)で導入しました。それでも(経営者向けのスクールと比べると)そこまで高くないし、月1回の短期集中で予算では許容範囲内で、それが判断基準の一つでした。
それから、(人活工房代表)小笠原さんからお話を聞かせていただいた中で「土壌が腐っていたら木も実も全部腐る」っていうのがやっぱり刺さりました。というのも自社を振り返ると会社全体としての土壌が良くはないと私は感じていましたので。
実際、私が引き継いだ時は年間休日が少なく離職率が非常に高かったんです。給料はそこまで低くはなかったと思いますが、トップダウン体質が強く部下が自分で判断をしない、責任を取らない状況になっていました。だから私にストレスがかかってそれがしんどいというのと、いろんな人と話して「そんなことまで社長がやっているんですか?」と言われることがすごく多くて…ということはやはり私が全部決めているんだ、だからしんどいんだと思い、どちらをとろうか考えました。このしんどさを続けて「自分が成長したら良い、器を大きくするチャンス」とプラスに受け止めて私だけ成長するのか、文句だと思っているものがもしかしたら文句じゃなくて本当に会社のことを愛してくれていたらそれは聞かないといけないわけであって、その点を小笠原さんと相談するにつれて私の中で意識が変化していきました。
結果として最終的な決め手となったのは、私が正しいと思っていることが間違っていると思わないとダメだろなと思いましたので。
ご自身でトップダウン式だと気づかれていたとは思いますが、何かご自分で変えようとはされていましたか?
制度とかは変えていたけれど、でもやっぱりどこかで従業員を締めつける制度になっていたと思います。そういうことを従業員は薄々感じていたんだと思います。
「私が変わらないといけない」
初回の集合セッション1を終えた時に感じたことは何でしたか?
KJ法を使って会議を進めていくときに私の中では効果がすでに見えた感じがしましたね。最終的には自分たちで決断していくんだなと思ったので、すごく期待が持てたのを覚えています。ルールも皆で決めて、連帯責任を取る仕組みができたので安心でした。これで私も含めて皆逃げられないなっていうのがありました(笑)。
皆の意見が出るし新しい意見も出るし、私は皆が決めたものを実行していったらいいだけだなと思って、ある意味楽をさせてもらえました。
ビジョンを明文化する際にとある文言が私の価値観や考え方とは違いましたが、それで皆のベクトルが向いて、最終皆がそういうところに落ち着いたのであれば別に良いかと思えました。
途中、ご自分の中で起きた大きな変化はどのようなことでしたか?
思っていたより皆に愛社精神があるというのがわかったことが大きかったですね。それを感じるから休みや給料のこと、制度を変えることが個人的なことではないだろうなと感じるようになりました。
「何を言っても会社のためになる」と私自身が思うようになっていきました。だから今も基本的にストレスがないですね。
色んなことを相談してきますがその時に「なぜそう思う?」と理由を聞くようにしています。主観的な意見を言いに来る人もいれば部下から言われて意見を言いに来る人もいるので、そういうときは「あなた自身はどう思うか?」と聞くようにしていますし、話を聞いて「それなら制度を変えようか」とパッとすぐに変え、それを今もやっているからとても速い。
それまでは提案書を提出してもらいその想いを書面で測っていました。今もその仕組みは残していて、そのほうが良い場合もありますが、多くは直接のコミュニケーションで進むようになりました。
責任を取り始めた幹部
TDPが完了した時の気づき・発見と感想は何でしたか?
「管理職の人たちに愛社精神があったんだな、別に私が社長をしなくても誰かができるな」と思いました。私は社長という役割を演じているだけで、その役割に執着したり驕りはありません。ただ、中小企業なので社長業だけでなく現場にも出るので様々な顔になりますが。私よりも能力があればその人が代表をすれば会社はより良くなると思っています。もちろん私はその人に負けないように切磋琢磨しますよ。
TDPが完了してからこの1~2年で特にそう思えるようになりました。
導入前は一部の人に変わって欲しいと言われていましたが、TDPが終わってからその期待に関してはどうなりましたか?
1人は導入の途中からどんどん変わっていったし、今は更に責任感が上がっています。行動や考え方を見ていて、今後部長とか役員にならないといけないと自身で思っているような印象です。
1人は評価=給料という考え方が以前からありますが、売上を伸ばさないといけないと前より強く思ってくれるようになっていますね。個人中心だったのがチーム・会社のことをよく考えてくれるようになっています。プライベートを優先する際は、部下にどう思われるかとかどのようにメンバーに説明するのか等、責任を取ってもらったうえで行動するのであれば良いと捉えているからストレスがなくなったと思います。
もう1人は、チームで現場をきっちり回して皆で数字を作るということに関してすごくよく頑張ってくれています。ポーカーフェイスなところもあるので、私の知らない事も「そこまで細かい事を社長に言う必要がない」と思ってやってくれているようです。
昨年度は過去最高の売上になられたそうですが、現在どのようなことに活かされていますか?また結びついている成果があればそれは何ですか?
以前は情報に漏れがあり共有されていないというのが結構ありましたが、社内SNSを使ってグループで共有するようになって情報共有が進み、実行スピードが上がっています。
TDPの枠組みは「目標達成会議」として今も続き、おかげさまで離職もほぼなくなり、辞めたいといった人も踏みとどまってくれています。
とはいえ新たな課題も出てきていますので、更なる幹部チームのレベルアップを図っていく予定です。